調理に使おうとした牛肉が変色していて、驚いた経験はありませんか?イメージとは異なる色をしていると、その牛肉を食べてよいのかどうか迷う人も多いでしょう。
牛肉が変色する理由や実際に腐敗した肉の特徴、変色を防ぐ方法についてご紹介します。
ネットで買った牛肉が変色している!?
インターネットなどで購入した牛肉。料理を始めようと肉をめくり、表面と内側の色の違いに戸惑ったことはないでしょうか。変色や品質の劣化を疑い、使用をためらうこともあるかもしれません。食べて大丈夫なのか、匂いは大丈夫なのか、加熱すれば大丈夫なのかなど見分け方をご紹介。
“変色”ってどんな色?
多くの人が見るからにおいしそうな牛肉の色としてイメージしているのは、鮮やかな赤色でしょう。しかし牛肉がその色を保っている期間は、非常に短いです。牛肉は時間が経つにつれ、全体もしくは一部が灰色や黒色、茶色、褐色、緑色、黄色などに変色していきます。中には食べると体調悪化を招く危険な状態を示すものもあるので、注意が必要です。ただ、すべてのケースで傷んだり風味が悪くなったりしているとは限りません。変色は複数の要因によって発生し、要因毎によってそれぞれ色も異なります。
牛肉はなぜ変色するの?
では、牛肉が変色する原因は何なのでしょうか。変色の主な原因となる要素は、酸素・微生物・酵素の3つです。
酸素によって牛肉の色が変わるのは、筋肉の中に「ミオグロビン」という物質が含まれるからです。もともと酸素を貯蔵する役割を持つ色素タンパク質の一種で、酸素と親和性があり、結合することによって色を変化させます。
実はカットして間もない牛肉の色は、グレーや黒味がかった赤。牛肉の中のミオグロビンが空気中の酸素に触れるにつれてオキシミオグロビンになり、鮮やかな赤へと変わっていくのです。スーパーなどで陳列された牛肉で、重なった内側の部分が黒っぽいという場合は、この変色がまだ十分に起こっていない可能性があります。一旦赤くなった牛肉も、更に酸素と触れる時間が長くなっていくと酸化が進み、次第に黒っぽく変色していきます。
また、カビや細菌、ウィルスなどの微生物も牛肉を変色させる要因です。微生物には人の食品に栄養やおいしさをもたらすものがある一方で、有害なものも数多く存在します。体に悪影響を与えるカビや食中毒を起こすような菌もあるため、取り扱いには気を付けたいものですね。微生物の影響で緑や黄色に変色した牛肉は、口にしないようにしてください。
そしてもう1つは酵素による変色です。酵素は牛肉自体に含まれるもので、肉のタンパク質を分解していく働きを持っています。この酵素の働きをうまく活用しているのが熟成肉。ですが、安全な熟成肉を作るには同時に微生物の活動を抑える必要があり、専門的な管理が必要とされます。
変色した牛肉は食べられる?
買ったばかりの肉の内側だけ色が変だという場合、多くは調理して口にしても問題ない状態です。スライスされた牛肉の重なり合った部分は、酸素による影響をあまり受けません。そのために、赤への変色がまだ進んでいないことが考えられます。この状態に当てはまる牛肉であれば、鮮度が悪いどころか新鮮なもの。調理しておいしく食べられるでしょう。
判断の目安としては、空気に触れている牛肉の表面部分がきれいな赤であり、隠れている部分のみの色が異なること。また、肉同士で重なっていた部分は酸素に触れることで黒く変色するので、心配な場合は肉の向きなどを変えて30分ほど時間を置き、様子を見るとよいでしょう。
こんな時は注意!腐った牛肉の特徴
もちろん変色が腐敗のサインである場合は、食べるのを避ける必要があります。賞味期限が過ぎていたり、うっかり食べて健康を損ねることのないよう、牛肉が腐るとどんな特徴を示すのか知っておきましょう。
色
見た目でももちろん判断できます。表面から見えない一部分だけでなく、全体的に灰色や黒味が濃く変色しているのなら、牛肉の鮮度は落ちています。
こうなると牛肉は、おいしそうな赤い色の状態を既に過ぎ、酸化が進んで腐敗が始まっているということです。微生物の繁殖を示す緑色や黄色への変色も注意してください。
臭い
色だけでなく、臭いも腐敗を判断する目安になります。牛肉に顔を近付けて、鼻をツンと刺激するような酸っぱい感じの腐敗臭がしたら、食べると危険な状態です。新鮮な状態の牛肉は、品種によってもやや違いますが、草や乳製品のような柔らかな香りがします。
触感
牛肉が腐ってくると、本来はぷにぷにと適度な弾力性がありますが、弾力がなくなり表面がぬるぬるしてきます。直接手で触らなくても、見た感じで明らかにぬめりや粘りがあったり、納豆のような糸を引いていたりするなら、腐敗している証拠です。
また、牛肉に含まれている水分は徐々に流れ出てドリップとなります。始めはサラサラしているドリップも、牛肉の腐敗が激しくなるとドロッとしてきます。
牛肉の変色を防ぐ保存方法
購入した牛肉を食べるまでしばらく保存しておくのなら、なるべく変色を防ぎたいものですね。そのためには、適切な温度管理と酸化の防止が重要です。5℃以下の冷蔵庫で保存すれば微生物の活動を抑制できますが、使用までの保存期間を考えて冷蔵室と冷凍室の使い分けをしましょう。
冷蔵室で保存する場合も冷凍庫で保存する場合も、牛肉はそのままではなく、以下のように処理しておくのがおすすめです。
1.牛肉を1回分ずつに小分けにする
2.できるだけ空気を入れないようにラップで包む
3.ラップで包んだ牛肉を更にジッパー付き保存袋に入れる
このように処理しておけば、酸素との接触も最低限にできるでしょう。また、ご家庭の冷蔵庫にチルド室があるならそこに入れて保存します。冷蔵室の中でも0℃前後と温度の低いチルド室であれば、微生物の繁殖もより抑えられます。ドアの開け閉めが温度の変化にあまり影響しないのもチルド室のメリットです。小分けする際には雑菌などの付着を避けるために清潔な箸などを使用してくださいね。
冷凍室で保存する場合は、すみやかに肉全体の温度を下げるために薄い状態でラップに包むのがポイントです。調理をする日は、時間を逆算して牛肉を冷蔵室に移しておき、ゆっくり解凍させるようにしましょう。
牛肉は “外側” から腐敗が始まる
牛肉の特性として挙げられることに、肉の表面・外部から腐敗が始まるという点があります。これは牛肉が肉を分解する酵素を有していないためです。一方で、豚肉は肉の内部から腐敗が始まるという性質をもっています。このことから、牛肉保存の際は空気になるべく触れさせないということが重要です。牛の塊肉などについて、酸化以外の変色がみられた場合、腐敗臭さえなければ表面肉を削ぎ落とす(トリミング)ことにより問題なく食べることができます。
安心して牛肉を食べるなら冷凍保存がおすすめ
変色や腐敗などを気にせず保存するなら冷凍保存がおすすめです。冷凍保存であれば、半年~最大2年保存できます。
解凍方法も食べる前日の夜に冷凍庫から冷蔵庫に入れ替えるだけで、旨味成分となるドリップ(赤い汁)もほとんど出ず新鮮な状態で食べられるためおすすめです。
焼肉店や精肉店等でも同様の方法を取っているので、焼肉店とほとんど同じクオリティを保つことができます。
まとめ
牛肉をトレーやパックなどから取り出してみて、変色しているのでは?と感じたこともあるかもしれません。
もし牛肉の重なり合った部分だけが黒っぽいのであれば、鮮度に問題なく食べられる状態です。というのは、その状況であればまだ酸化による変色が発生していないからです。
牛肉は、酸化のほかに微生物、酵素の要因でも変色を起こします。変色は品質の劣化や腐敗を示すサインでもあるため、変化を見逃さないようにしましょう。
正しい方法で保存して変色を防ぎ、おいしい牛肉で家族の食卓を彩りたいですね。