贅沢をしたい日はブランド牛を食べたくなりますが、そもそもブランド牛とは何かご存じですか?
この記事ではブランド牛について、各ブランド牛の餌の特徴や生育方法についてご紹介します。ブランド牛への知見を深めることにより、よりおいしくいただけるはずです。
牛肉が好きな人や、ブランド牛の餌について知りたい人は参考にしてください。
そもそもブランド牛って何?
ブランド牛は全国に320種類以上あり、品種や種別の他に枝肉の格付、飼育方法などブランド牛を推進する団体の条件を満たした牛を言います。
数が多く、全てを挙げるのは困難ですが、一部ご紹介すると、但馬牛、神戸牛、特産松阪牛、米沢牛、前沢牛、宮崎牛、近江牛、鹿児島黒牛、くまもとあか牛などがあります。
なおブランド牛は和牛ですが、国産牛とは基準が違います。
その違いは以下の通りです。
・和牛:黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の肉質の良い4種類の牛を指します。
・国産牛:海外で生まれ育ったとしても、日本国内で飼育された期間が最長である牛のことを指します。
より優れた肉質のもので、細かい条件をクリアした和牛だけがブランド牛になれるのです。
ブランド牛って普段なに食べてるの?
ブランド牛は普段何を食べているのか気になりますよね。
ここでは、各ブランド牛がどういった餌を食べているのかその特徴、生育方法について説明します。
神戸牛
神戸牛は狭い牛舎に押し込められるような生育方法ではなく、1頭当たり十分な面積を保ちながら、ストレスには細心の注意を払いつつ育てられます。
市販の乾燥した牧草に、大豆やとうもろこし、大麦、ふすまなどを配合飼料としてブレンドしたものを餌として与えています。
水にもこだわりがあり、人が飲むものと同じきれいな水を与えることで、高品質な肉質に仕上がるのです。
松阪牛
松阪牛はきれいな水が流れる川の近くで、900日かけて生育されています。
牛舎では松阪牛にストレスがかからないように1頭ずつ個室に入れて管理し、必要があればブラッシングや洗体、散歩に連れて行くなどして個体に合わせて対策しています。
そして各農家オリジナルブレンド、門外不出の餌を牛の月齢や体調に合わせて与えて育てています。松阪牛の食欲が落ちた際はビールを飲ませる酪農家の方もいて、なかなか特徴的です。
米沢牛
米沢牛は山形県内で生産、流通、出荷、消費が行われている珍しいブランド牛です。
広大な自然の中で、牛1頭ずつストレスを与えないように生育されます。子牛の時には五種混合予防注射が行われ、体調は厳しく管理されているのも特徴です。
餌は乾燥した稲わらなどに加え、麦、ふすま、大豆粕、とうもろこし、米ぬかが与えられています。このバランスは、肥育時期や成長具合、体調を考慮して肥育農家が都度決めています。
近江牛
近江牛は滋賀県の豊かな自然と琵琶湖の水源を利用して育てられています。
肥育農家の大部分は大中地区に集中しており、そこの寒暖差を利用して育てられた近江牛は締まりのよい肉質に育つのが特徴です。
肥育期間20~22か月の間の餌は、牧草やワラの他にビタミンやミネラルもブレンドしたものから食べさせます。ある程度まで成長したら、トウモロコシや麦、大豆粕を与えはじめますが、肥育農家の判断でブレンドの割合は決まります。
他にも大中地区には「近江大中牧友会」という団体があり、そこに所属する肥育農家が牛舎を定期巡回し、地域で近江牛を育てていることも肉質の高さの秘密です。
佐賀牛
佐賀牛は佐賀県の穏やかな気候の元で育てられた牛肉です。澄み切った空気ときれいな水環境のもと、なるべくストレスがかからないように餌の内容やタイミングも考慮されつつ肥育されています。
餌は単味飼料、混合飼料、発酵飼料を組み合わせて与えられます。このバランスは肥育農家の熟練した経験で判断され、佐賀牛の状態をみて常に調整するのが特徴です。
一風変わった餌で育つブランド牛もいる
乾いた牧草とトウモロコシや麦などをブレンドした餌が主流ですが、一風変わった餌で育つブランド牛もいます。次で詳しくご紹介します。
こぶ黒
「こぶ黒」は、昆布(こぶ)と黒毛(くろ)が由来の北海道新ひだか町のブランド牛です。生まれてから30か月間、ストレスに注意しながら育てられます。
山と海に囲まれている立地のため、土壌はミネラルを豊富に含み、その土地で育った100%自給自足の牧草を食べて育ちます。
一番の特徴は、日高地区特産の日高昆布を餌として与えている点です。日高昆布にはカルシウムやビタミンミネラルが豊富に含まれています。他にも牛の体調管理や肉質のために、道産もち米粉や発酵飼料を与えています。
もとぶ牛
もとぶ牛は沖縄で育てられたブランド牛です。沖縄の穏やかな気候の中、牛舎でストレス対策を行いながら、スタッフ1人につき150~300頭の担当制で育てられています。
もとぶ牛の餌の特徴は、オリオンビール粕などを混ぜて作るオリジナルの発酵飼料です。この発酵飼料は25年以上経験のあるベテランスタッフが作っており、オリオンビール粕と糖蜜、配合飼料、水分量と細かく調整されています。それを牛の月齢や体調、タイプを見て与えることで、口当たり良く柔らかい肉質の牛へと育っていきます。
大阪ウメビーフ
大阪ウメビーフは、年間40~45頭しか生産できない希少なブランド牛です。肥育用の抗生物質やホルモン剤は使用しておらず、のびのびと健康的に育てられています。
大阪ウメビーフの餌の特徴は、梅酒会社のチョーヤ梅酒の漬け梅をリサイクルし混ぜている点です。種まで粉砕しているので、梅の実まで余すことなく牛は食べています。
なお、梅酒用の梅を使って牛の体調や肉質に悪影響はないのか というと、全くありません。むしろ一般の牛肉と比較して、ビタミンEが1.5倍になったという研究結果もあります。美味しいだけではなく、より健康的に仕上がっているブランド牛です。
飼料で牛肉の香りが変わる?
皆さんはスーパーなどで手に取る「外国産牛肉」に、どのようなイメージをお持ちでしょうか?少し”独特の香り”がして苦手という方もいるのではないでしょうか?
牛の飼育法は大まかに「グラスフェッド(牧草飼育)」と「グレインフェッド(穀物飼育)」という2つのものに分けられます。
オーストラリア産牛肉をはじめとする外国産牛は、グラスフェッドで育てられたものが大半。牛は元々草を食べる動物なので、これがいうなれば自然由来の育て方です。
グラスフェッドで育った牛肉はサシがあまり入らず、ヘルシーな赤身肉となります。そのためオーガニックレストランで提供されたり、食に関してヘルシー志向の方に好まれる傾向があります。
実はこの”独特の香り”というのは、グラスフェッドであることが起因しています。というのも牧草にはミネラル分がしっかり含まれており、それを牛が食べることによりお肉から例の”独特の香り”がするようになるのです。
外国産牛肉はその香りから「傷んでいるのではないか?」「品質がわるいのではないか?」などと誤解されやすいですが、むしろ自然由来の飼育法で育った、健康に良いお肉ともいえるのです。
まとめ
ブランド牛が美味しい理由は、生育環境に細心の注意が払われ、こだわりの餌が与えられるためです。
その上で厳しい基準を満たした牛のみがブランド牛という称号を得られるため、価格が高いのも納得です。
その土地の気候や環境、特産を絡めた餌などを上手に取り入れているからこそ、肉ごとに違ったおいしさが楽しめるのも魅力ですね。ブランド牛を見かけたら、ぜひ食べ比べしてみてください。